陸生と水生の有用植物を活用した水質浄化

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要約

陸生と水生の資源作物・花き等を水質浄化に利用できるバイオジオフィルター(植物─濾材系)水路を試作し、ケナフ、パピルス、ソルガム、イタリアンライグラス、オオムギ、ハナナを栽植した水路の窒素とリンの除去速度は、植物の生育が旺盛な時期には、0.8g/m2/dayと0.15g/m2/dayになることを明らかにした。

  • 担当:農業研究センター・土壌肥料部・水質保全研究室
  • 連絡先:0298-38-8829
  • 部会名:生産環境
  • 専門:環境保全
  • 対象:
  • 分類:研究

背景・ねらい

現在、生活系排水の増大等により、農業用水源の汚濁が進行しており、排水中の窒素・リンを発生源の近くで効率良く除去できる農村地域に適した水質浄化技 術の開発が急がれている。作物生産や景観形成等の機能を有す付加価値の高い水質浄化を目指し、陸生植物を含む資源作物や花き等の水質浄化への活用を検討し た。

成果の内容・特徴

  • 濾材(ゼオライト)を充填し、その上に植物を植えた網籠を設置した水路(バイオジオフィルター水路、400×40×40Hcm)を試作し、網籠に充填する濾材の高さを、陸生植物は水面より10cm程度高く、また水生植物は水面と同程度にすることで、陸生と水生の植物を同一水路内で水質浄化に利用できるようにした(図1)。
  • 生活系排水の2次処理水を想定した人工汚水(N:20mg/L、P:3mg/L、流入水量:80L/m2/day)を用い、陸生植物を含む20種類の資源作物・花き等の水質浄化機能を調査した結果、植物栽植によりバイオジオフィルター水路の窒素・リン除去機能は向上し、バイオマス生産速度の高い植物を栽植した水路ほど窒素・リン除去速度は高くなった(図2、3)。
  • 各植物栽植水路の窒素・リン除去速度の比から、流入汚水の窒素・リン濃度比が約5:1の場合に、最もバランスの良い浄化が行えることがわかった(図2、3)。
  • ケナフ(紙の原料として注目されている繊維作物)、パピルス(古代エジプト、ギリシャの紙の原料)、ソルガム、イタリアンライグラス、オオムギ(農研センターで育成中の関系b443)、ハナナ(花き)栽植水路の窒素とリンの除去速度は、ホテイアオイ(0.5~1.6g/m2/day、0.1~0.3g/m2/day)に匹敵する0.8g/m2/dayと0.15g/m2/dayとなり、バイオジオフィルター水路栽植植物として優れていることを明示した(図2、4)
  • パピルスを栽植した水路の水質浄化機能は極めて高く、夏期には、窒素1mg/L、リン0.1mg/L(湖沼環境基準類型V)以下の流出水を得た。

成果の活用面・留意点

  • 水質浄化機能の高い植物の栽植組み合わせにより、真冬期間以外は、水路への汚水負荷量を、窒素0.8g/m2/day、リン0.15g/m2/day、で運転管理できることが判明した。
  • 茨城県つくば市のガラス室内(3~11月の期間窓を開放)で行った試験である。

具体的データ

図1 バイオジオフィルター水路

図2 各植物栽植バイオジオフィルター水路のリン(P)、窒素(N)除去速度

図3 バイオジオフィルター水路の平均窒素、リン除去速度と栽植植物の平均地上部乾物重増加速度

図4 各植物栽植バイオジオフィルター水路のリン除去速度

その他

  • 研究課題名:耕地における水質浄化技術の開発、農業用排水中の栄養塩類の資源循環型簡易浄化技術の開発
  • 予算区分 :経常・国県共同研究
  • 研究期間 :平成6年度(昭63~平3、平5~平9)
  • 発表論文等:バイオジオフィルターによる水質浄化、ALPHA、7巻9号、1993